ベンチャー企業における広報の役割とは?効果的な外注の仕方も紹介

ベンチャー企業の場合、人的リソースや資金が不足しがちなことから、なかなか広報PR活動まで手が回りません。しかし、「本当はやるべきだ」と思っている経営者の方は多いのではないでしょうか。
あるいは、「広報をやってはいるが、なかなか軌道に乗らない」と思っている経営者および広報担当者の方も多いでしょう。

顧客や社会と良好な関係を結び、会社やブランドを大きく伸ばしていくためには、広報は不可欠です。
今回は、ベンチャー企業の広報が置かれている特殊な状況を確認するとともに、ベンチャー企業における広報の役割と方法をお伝えします。

あわせて、ベンチャー企業でも活用できる効果的な外注の仕方にも触れていきます。

ベンチャー企業における広報の役割とは?効果的な外注の仕方も紹介

ベンチャー企業における広報の特徴

まずベンチャー企業における広報の特徴を整理します。

一口に「広報」と言っても、ベンチャー企業の広報と大企業の広報では置かれている状況が全く異なります。
ベンチャー企業にお勤めの方にはご存知の内容が多いかもしれませんが、改めて確認してみましょう。

「ひとり広報」になることが多い

小規模な会社が多いベンチャー企業では社内で広報担当を置く場合でも、広報部までは作らず、一人で広報を担当する、いわゆる「ひとり広報」になることが多いです。

「ひとり広報」は小回りがきくという長所もありますが、一方、以下のような点で困っている広報担当者も少なくありません。

  • 社内で広報のノウハウを共有してもらうことができない
  • 広報施策について相談できる相手がいない
  • 対応できる業務量に限界がある

「ひとり広報」には他社で広報実務を経験したベテランが着任する場合もありますが、多くの場合は広報経験の少ない方が任され、悩みながら試行錯誤することになります。

会社やブランドの知名度がまだ低い

ベンチャー企業は会社やブランドについてまだ広く知ってもらえていない状態がほとんどです。
何か新しい情報を発表したとしても、有名大企業ほど容易にはメディアに取り上げられないでしょう。
SNSを運用していたとしても、フォロワーがなかなか増えないことに悩む広報の方も多いはずです。
ベンチャー企業の広報は大企業とは違った面での難しさがあると言えるでしょう。

スピーディーな動きが求められる

ベンチャー企業では知名度がまだ低いこととも関連して、情報発信の頻度を高めることが求められるケースが多いです。会社自体の動きが速いことも多く、新商品・新サービス、キャンペーンの情報や、時には採用・体制変更の情報をその都度適切に発信することが求められます。
また、「求められる」とはならなかったとしても、それは単に、その会社の中に広報業務についてのノウハウを持つ人がいないから、何を求めれば良いのか分からないだけ、ということもあります。そういった場合には、一人広報が自ら広報の役割を考え、試行錯誤しながら行動することになります。
そして、その結果増大した業務量に手が回らなくなる広報担当者も、珍しくはありません。

目的、ブランドコンセプト、方針などが必ずしも明確でない

ベンチャー企業では、広報活動の目的、ブランドコンセプト、方針などが曖昧であったり、時には全く決まっていない場合があります。また、仮にコンセプトなどがあったとしても、実際の商品・サービスやターゲットとなる顧客にまだうまく馴染めていないこともあるでしょう。

しかし、広報をする以上、どこかで必ず、目的、ブランドコンセプト、方針などは明確化すべきです。
目的、コンセプト、方針などが無くても、インターネットで検索したりすれば、例えばプレスリリースなどの作業はできるかもしれません。しかし、それらが無いまま行う作業は、何のためにどんな情報を発信するのかが定まっていないので、必ず、それ以降の対応がブレブレになり、何を達成したのかが分からなくなります。

ベンチャー企業における広報の役割

広報の役割について「認知拡大」や「販売促進」などを思い浮かべる人は多いです。

それが間違っているわけではありませんが、ベンチャー企業の広報の役割は主なところとしては以下の2つになるのではないでしょうか。

社外では顧客、仕入先、地域社会、メディアなどのステークホルダーと良好な関係を結ぶ

ベンチャー企業における広報の対社外での役割は、パブリックなステークホルダー(例えば顧客、仕入先、地域社会、メディアなど)と良好な関係を結ぶことです。

広報と似た意味で使われるPRという言葉はPublic Relationsの略です。
認知拡大や販売促進は、パブリックとの良好な関係があってこそのものです。企業側が一方的な情報発信をしているだけではパブリックと良好な関係を結ぶことはできません。

ちなみに『広報』には大きな役割として、自社の情報を社外に発信するだけでなく、社外の情報を受診し(外部広聴)、それを社内に発信する役割(情報参謀)という役割もあります。パブリックが声をしっかり聴き、求めている情報を社内に伝え、その期待に超えたる情報を発信して行くような相互の交流を通じて、良好な関係を築くことが広報には求められます。

社内では会社やブランドの方向性を明確にする

ベンチャー企業における広報の対社内での役割、いわゆるベンチャー企業の社内広報の役割は、会社やブランドの方向性を明確にすることです。最近重視する企業が増えている社内広報の目的は、突き詰めれば会社やブランドの方向性を明確にして社員に共有することにあります。

前述した通り、ベンチャー企業では会社やブランドの方向性がしっかりと定まっていないこともあり得ます。あるいは、創業メンバーの間では共通認識があったとしても、事業拡大に伴って参加してくれたメンバーや社外に向けたメッセージになっていないことも少なくありません。そのため、会社やブランドの「見え方」を考え、情報発信の過程で方向性の整理をするのも広報の役割になります。

読んでいただくとわかる通り、この広報の役割は経営やブランドの中核に直結しています。まずはこの役割の重要さを社内で認識することが、広報担当者の仕事を後押しするための一歩でしょう。

ベンチャー企業における広報の方法

ベンチャー企業における広報の方法は多岐にわたります。
主なものだけに絞っても業務量としてはボリュームがあるので、「ひとり広報」の多いベンチャー企業の広報担当者が全てを自分でやろうとすると、キャパシティを超えるかもしれません。また、広報担当者に広報としての経験やノウハウが少ない場合は、実際にどのように対応して行けばいいのか自信を持てない場合もあるでしょう。

そこで、ここでは、主な広報手法の紹介にあわせて外注の上手な使い方も提案します。
もちろん、「外注する予算なんかない」という声があるのは百も承知しています。

ただ、以下の2点は考慮していただいてもよいと思います。

・大手の広報代理店だと費用が高くなるが、当社のような小規模な会社だと予算に合う場合もある
・自社でゼロから試行錯誤するよりも、最初は外部のサポートがあった方が効率的に広報施策を実行できる可能性が高い

一度外注したからと言って、ずっと外注しなければならないことはありません。
いずれ広報PR活動を自社で回せるようになりたいのであれば、予めそのように伝えたうえで、専門のコンサルタントの助言を受けながら二人三脚で対応する、という方法もあります。

また、これは他の場でも度々申し上げて来たことではありますが、自社に広報PR活動のノウハウが無いのであれば、丸投げは最悪の選択ですが、丸抱えは次悪の選択です。

確かに、業種や業態は一つ一つの会社によって違うので、専門のコンサルタントに頼めばすぐに上手く行く、という訳ではありません。やってみないと分からないことや失敗から学ぶこともあるでしょう。しかし、広報PR活動とは前述の通り、パブリックと良好な関係を築くことであり、成果が出るまでには数か月単位の期間がかかります。SNS一つとっても、知名度の無いB to B企業のアカウントがフォロワーを1,000人以上にしようと思ったら、それだけで半年以上かかることも珍しくありません。
それらの活動を、全く手探りの状態で試行錯誤しながら全て自社で対応して行くということは、長大な時間をかけたうえで成果に繋がらない可能性がある、ということになります。ですから、これは必ずしも当社に限りませんが、特に初期段階では広報PRを専門にしているコンサルタントに伴走してもらうことを強くお勧めしております。

以下で、上手なコンサルタントの使い方を見て行きましょう。

プレスリリース・ニュースレター

プレスリリースはメディアにニュースの材料を提供する資料です。
内容はニュース性のあるものに限られるので、新商品・新サービスの発表、キャンペーン・イベントの告知、調査結果の公開など、新しい情報がメインです。

プレスリリースは基本的にはメディアに届けることに意味があるので、メディアに直接送るか、PRTIMESなどの配信代行サービスを利用して配信します。
プレスリリースには決まったフォーマットや書き方のポイントがある ため、ある程度の経験が必要です。プレスリリースに対してニュースレターは、社会のニーズやトレンドなどを踏まえてメディアにネタを提供するものであり、こちらは発表済みの情報を内容としても構いません。
ただし、プレスリリースに比べるとメディア掲載の確度は落ちるということと、利用できる配信代行サービスが限られることには注意が必要です。

プレスリリースは自社で作成する会社も多いですが、広報に不慣れで試行錯誤を繰り返しそうなら、外注も検討してみてください。
というのも、例えば業界最大手の配信代行サービスPRTIMESを利用すると1回の配信につき従量課金プランでは3万円かかります(2024年6月現在)。試行錯誤しながら10回配信したら30万円です。もちろんその間、広報担当の方の工数もかかっています。

それならまず当社のような、広報PRを専門にしている小規模なコンサルタントに依頼をして、自社のプレスリリースを専門のコンサルタントが書くとどうなるかを最初に見てしまうというのは、悪い選択肢ではありません。それを踏まえて、その先は自社でプレスリリースを書いていくなら、最初の試行錯誤にかかる期間を短縮できます。

コンサル会社によっては、自社で書いたプレスリリースへの監修や配信のアドバイスだけをしてくれるサービスもあります。慣れないうちは、そういった監修サービスを利用してもよいでしょう。プロから添削が入ると参考になる部分も多いはずです。

【プレスリリースについては以下の記事で詳細を解説しています】

イベント

記者会見、トークイベント、シンポジウム、試食会、ウェビナーなどのイベントも、重要な広報PR活動です。

ただ、イベントにもよりますが、準備や段取りに大きな労力がかかることが少なくありません。台本を書いてスムーズに進行することも大切ですが、決められた時間内で滞りなく終えられる台本を作ることは想像以上に大変です。
また、例えばメディアを呼ぶなら告知をして、出席者の管理をして、当日受付をする必要があります。そして、参加しなかったメディアから「動画や写真など素材はありますか」と聞かれれば応えたいところです。一般ユーザーの参加者が増えると、嬉しいことではあるのですが、それに応じた対応するスタッフの人数も必用になります。

イベントはうまくいけば大きな効果が見込めるものの、経験がないと、必要な準備が抜け落ちてしまい本番まで気付かなかったり、最悪の場合は、参加者から大きな不満を買う可能性もあります。そのため、最初の頃は広報のコンサルティング会社やイベント会社を頼るのも一つの選択肢でしょう。

ただ、のちに自社だけでイベントを行えるようになりたいなら、イベント会社に丸投げはせず、ある程度は自社でも動くことを前提に、戦略的な対応ができる広報のコンサルティング会社と一緒に対応した方がよいでしょう。

【イベントについては以下の記事で詳細を解説しています】

【PRイベント】ファンを作るポイントは? 事例を交えて、企画、集客、運営を解説

メディアリレーション

プレスリリース・ニュースレターやイベントにも付随しますが、広報ではメディアリレーションも非常に重要です。

メディアリレーションとは、企業とメディアの間で長期的な良好な関係を築き、企業の情報発信を支援する活動です。記者との信頼関係を築くことで、自社のプレスリリースを掲載してもらったり、記者から取材を受けたり、といったことに繋がる可能性が高くなります。
具体例としては、以下のような活動が挙げられます。

  • メディアリストを作り、これまでのコミュニケーションや掲載実績を分析する。
  • 新商品の発売に先駆け、記者向けの説明会を開催し、商品の機能や魅力を詳しく説明する。
  • 地域貢献活動を実施し、地元の新聞社に取材してもらう。
  • 記者から取材を受けた際には、丁寧に対応し、正確な情報を提供する。
  • メディア掲載の成果を分析し、次回のメディアリレーション活動に活かす。

このように、メディアリレーションは、単にプレスリリースを配信するだけでなく、記者とのコミュニケーションを重視した活動です。時間と労力をかけて信頼関係を築くことで、企業にとってより効果的な情報発信が可能になります。
もし、自社に興味を持ってくれるメディア関係者と繋がることができれば、広報をする上で財産になることは言うまでもありません。そのため、メディアリレーションはなるべく自社でやった方が良いでしょう。

とはいえコンサルタントの頼りどころもあります。
広報PRのコンサルタントは通常、豊富なメディアリスト(メディアやメディア関係者の連絡先一覧)とノウハウがあり、メディアリレーションを効率的に進める助言をしてくれます。メディアとの良好な関係は資産と呼んでも差し支えない、企業にとって極めて重要なものであり、絶対に丸投げするべきではありません。せっかくメディアに自社の名前を憶えてもらったと思っても、その名前が外注先のコンサルタントだったら意味がありません。
ですから、将来的に自社で広報PR活動をすることを想定するなら、コンサルタントにしっかりそのことを伝えたうえで、それを前提に支援してくれる相手を探すのが良いでしょう。

【メディアリレーションについては下記の記事で詳細を解説しています】

メディアリレーションのやり方 3ステップで解説

オウンドメディア

オウンドメディアは広義には企業が所有するメディア全般を指しますが、現在では主に、自社で情報発信をするブログのようなサイトを指して使われる言葉になっています。

オウンドメディアでは読者が関心を持つ情報を発信して、認知の向上、お問い合わせ、受注などにつなげます。SEO対策の視点で述べると、サイト全体の評価を高めることにもなります。また、オウンドメディアは、自社が情報発信している分野の専門家であるという信頼感の上昇にもつながります。適切に記事を書けば蓄積されていくので、自社の財産、資産になるでしょう。

ところが、オウンドメディアを定期的に更新するのはかなり工数のかかる作業です。また、記事やサイトの検索順位を上げるためには、SEOの知識や技術が必要になります。
サイトがない場合は、そもそもサイトを作るところから始めなければなりません。

自社で手が回らない場合は、サイト制作会社や記事制作を行っている会社、または個人に依頼できます。広報PRのコンサルタントに相談して、今後の継続的な情報発信を見据えた提携先のWEB制作会社を紹介してもらうことも一つの方法です。

なお、最近はnoteをオウンドメディア代わりにする企業も増えてきました。noteはアカウントを作成して多少カスタマイズをすれば、発信を始められます。
しかし、自社で独立してサイトを持つのとは違い、他社のプラットフォームに依存する分、プラットフォーム側の突発的な運用変更などのリスクはあります。オウンドメディアとは違い、自社の資産にもなりません。また、noteでの発信にはnoteのユーザーに合わせた内容の調整が必要です。

SNS

Twitter、Facebook、Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNSはユーザーに直接情報を届け、反応がもらえるのが最大のメリットです。サービスごとに利用者の属性や向いている商材が違うので、始めるときには注意が必要です。

企業SNSでは商品・サービスを売り込んでとにかく売り上げにつなげるというよりは、ユーザーとの交流やファンを増やすことを大切にした方がよいとされています。

SNSは無料で始められますが、更新に手間がかかるのは覚悟しておいた方がよいでしょう。
SNS運用代行会社もありますが、クオリティはピンキリです。自社や自社のターゲットを理解した上で運用代行してくれる会社を見つけるのには苦労することもあります。

広報代理店に聞くと、そもそも自社にSNSの部署があったり、取引のある運用代行会社を紹介してくれる場合もあるので、まずは付き合いのある代理店に聞いてみるとよいかもしれません。

【SNSについては以下の記事で詳細を解説しています】

【SNSマーケティング】SNSの選び方と始め方を具体的に解説します。

SNSを使ったPRの始め方 効果的な運用を構築する4つのポイント

まとめ

広報の手法を解説した書籍やサイトは多いですが、リソースに限りのあるベンチャー企業では、それらの全てを自社で行うのは至難の業です。そのための外注については、外注をすると広報の仕事を奪われるのではと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、広報PRのコンサルタントはあくまで広報活動をサポートし、広報の選択肢を広げるためにあります。
以来を迷われているようでしたら、以下のようなポイントで検討すると良いでしょう。

  1. 自社に無い専門的なノウハウを持っているか
  2. 自社が拠出できないリソースを担ってくれるか

注意点は、後者だけを基準に外注をすると、丸投げになるという点です。前者を前提に、自社で一定のオーナーシップ・主体性を持って対応して行く事を前提に、実際に手足を動かす部分について、自社で対応した方が良いか外注した方が良いかを、コストやリスクなどを基に検討しましょう。

また、当社のような小規模な会社であれば、上記の様な細かなご要望に応じてお見積りにも相談に乗ることができます。
自社で広報活動を行いながらも、要所要所で上手く外注を活用してみてはいかがでしょうか。

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花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。