【採用広報】新卒・正社員・アルバイトも、採用活動に広報は欠かせません
新卒、中途、正社員、アルバイトなどの属性を問わず、採用求人の場では企業が広報PR活動を行う必要性が高まっています。
採用広報では、「企業の認知度を高めること」「ミスマッチを防ぐこと」の2点が最も重要になります。そのためには、様々なメディアの特性を理解して情報発信を行っていくことが必要です。
本記事では、近年、重要性が高まっている採用広報の背景を説明した上で、実際の取組みや具体例を確認ししていきます。
【採用広報】新卒・正社員・アルバイトも、採用活動に広報は欠かせません
「採用広報」とは
内容に入る前に、まずは、近年に重要性が高まっている「採用広報」とは具体的にどのような活動なのかについて説明します。
採用広報とは、採用を目的として、自社と求職者の相互理解を深めるための活動全般を指します。直接的な選考に繋がらなくても、社会的認知を高めるための活動や、企業と応募者のミスマッチを防ぐための機会作りなど、広範な活動が含まれることが特徴です。
採用広報の重要性が高まっている背景
売り手市場の進行
少子高齢化を背景に、採用の売り手市場がかつてないほどに進行しています。
下図の総務省の労働力統計では、2010年を境に完全失業率は低下を続け、コロナ禍で一時的に停滞しましたが、それでも2022年は3%以下という極めて低い水準です。実際、大学(学部)を卒業した学生の2024年4月1日時点の就職内定率は98.1%で、調査が始まった1996年度以降で過去最高でした。
このように労働力そのものが減少している中で、中小企業であっても、賃金や処遇などの条件面だけでなく、自社を知ってもらい共感した人に応募してもらうことの重要性が増しています。
出典:総務省統計局 「労働力調査」 厚生労働省「職業安定業務統計」
採用手段の複雑化
採用求人広告や人材紹介会社といった昔からある採用手段に加え、動画広告や動画による通年の会社紹介、Wantedly(ウォンテッドリー)やSNSなど、採用活動の手段が多様化しています。また、中小企業や業界によっては、いまでもハローワークや紹介が中心だったり、口コミを聞いての直接応募た中心だったりする場合もあります。
企業は、デジタル化の進行により管理がしやすくなった面もありますが、求職者との接点が拡大・多様化したことで、これらの手段の特徴を理解し、自社の特性に合った手段を組み合わせながら管理する必要が生じるなど、複雑性が増しています。
働く人の多様化
旧来は、終身雇用かつ新卒一括採用が主流であり、新卒入社した企業に一生務める人が大半という時代もありました。しかし現在は、少子高齢化、デジタル化、国際化、競争関係の複雑化などとともに、終身雇用制は崩れ、転職が当たり前に許容されるようになりました。政府も、女性の社会進出と男性の育児参加を推進し、雇用の流動化(転職を含む)が経済活性化のキーとなると公言します。こういった社会変化により、職場にも老若男女だけでなく、外国人、ハンディキャップ、正規、非正規など多様な属性の人がいるのが普通になってきました。
ちなみに、当社の支援先である土木工事事業者では主婦の方が働かれていて、力仕事は男性に及びませんが、講習を受けて現場で重機を運転し、貴重な戦力として楽しみながら活躍されている例もあります。この例のように、今後は多様な属性を受け入れながら、それぞれの属性が活躍できるような職場作りをしていくことが重要になって行くと思われます。
企業と従業員との関係の変化
旧来は終身雇用が前提であり、終身雇用制のもとでは、キャリアは個人が主体的に形成するものではなく、企業の指示による全国転勤や社内異動の中で形成されていくものでした。そのため、従業員のキャリアは自然と、ゼネラリスト型でありつつもその会社に特化したものとなり、どこでも通用するスペシャルなスキルが身に着きにくいため、企業と従業員の間には力関係が生まれやすくなっていました(その力関係を緩和するため、日本では組合による団体交渉権が認められていました)
しかし、近年社会が大きく変わる中で、企業と従業員との関係も大きく変わって来ました。従来のような終身雇用を前提とした滅私奉公は嫌われるようになり、企業と従業員が対等な立場で互いを尊重する時代へと変化しました。
このように、大きな社会環境・経済環境の変化によって、採用活動も、旧来のように企業が応募者の中から気に入った人を選ぶ時代から、自社の良いところを求職者にしっかり伝え、自社を理解・共感してもらったうえで応募してもらうことが重要になって来ました。
そこで、採用活動のロードマップを踏まえ、企業と求職者の様々な接点を俯瞰的に対応し、最適化したメッセージを発信するために、採用広報が注目されるようになりました。
採用広報で検討すること
上述の通り、現在の採用環境は多様化・複雑化しており、最適な採用や広報の手段も、企業の置かれた状況によって大きく変わります。そのためここでは、採用広報を行う際の共通的な検討事項について、概略を解説して行きます。
広報PRの目的を決める
採用広報には、大きく下記のようなステータスがあり、企業がどのステータスに問題を抱えているかによって、採用広報の目的は全く変わります。
- 自社を知ってもらう
- 興味を持ってもらう
- 自社に好印象を持ってもらう
- 自社で働くイメージを掴んでもらう
- 自社に応募してもらう
例えば、応募者の少なさに悩んでいる企業の場合は、企業そのものを知ってもらうことに重点を置く必要があります。これは必ずしも沢山の募集広告を出すということではなく、自社の業種、業界、地域、その他の特性に応じて情報を拡散することが目的になります。
業種や業界によっては、リクルートやパーソルキャリアなどのいわゆる転職サイト経由の応募がほとんどなく、ハローワーク経由が多い、見学会や説明会などの直接接点への参加に偏る、口コミ頼りの直接応募が多い、といった特性の職場もあります。そういった場合には、例えば口コミがしやすいストーリーやイベントを作って情報発信するなど、それぞれの特性に応じたコミュニケーションにより、求職者にしっかり届くように工夫します。
また、早期退職者が多く、人材が定着しないことに悩んでいる企業の場合は、離職原因となっているネガティブな要素を除去するとともに、応募の段階でのマッチングを高めるために、社内の雰囲気や働き方を知ってもらうことが目的となります。
このように、母数の拡大なのか、マッチングの向上なのか、年齢構成比の最適化なのか、来年度の新卒採用に向けたイメージアップなのか、といった目的をしっかり確認しましょう。
媒体特性や市場特性を分析する
業種、業態、地域性、想定ターゲットによって、市場特性は全くことなります。
例えば、一般的に転職エージェントへの流通が少ないと言われている運転手や重機オペレーターなどの現場系・ガテン系の職種でも、首都圏や大都市圏ならクロスワーク、GATEN職、パワーワーク、ドラEVERなど、様々な転職サイトがあります。しかし、同じドライバーであっても、タクシーの運転手は一般的に転職サイトやエージェント経由は少なく、口コミを頼った直接応募が多いと聞きます。
媒体特性だけでなく、労働市場そのものを分析することも重要です。
例えば、通勤可能エリア内の有効労働人口はどのくらいか、競合状況はどうなっているか、送迎バスを作ったら採用市場が拡大しそうか、就労時間などの条件を変えれば採用市場が拡大しそうか、といったことを分析します。
ターゲットを明確化し、メッセージと伝達手段を決める
ここで重要なことは、ターゲットを明確にしてからメッセージと伝達手段を決めることであり、逆ではないことに注意が必要です。
社会経験の少ない新卒と十分な経験を積んだ中途では、当然ながらメッセージの内容も手段も異なります。アルバイト、主婦、シルバー、外国人などを戦力としている会社も、当然ながら、それぞれのターゲットに合わせたメッセージが必要になります。
また、このメッセージが組織の内外で矛盾しないように、社外に発信する前にまず現在の従業員の声をしっかりと聴くとともに、採用広報の背景、目的、取り組みなどを社内広報することも重要です。
そういった場合、例えば中期経営計画など会社の大きな方向性を改めて説明した上で、その中で今回の採用広報がどのような位置付けなのか、それぞれのポジションの既存社員にはどのようなことが期待され求められるのか、といったことが経営者の口からしっかり伝えられると、従業員の納得性も高まり、組織内外の矛盾は生まれにくくなります。
最近は、Microsoft StreamやYouTubeなどの便利な動画共有手段があり、社内広報でも社外への採用広報でも活用できます。それらの活用も検討しながら、効果的なメッセージと伝達手段を検討します。
例えばまだ社会経験の少ない新卒をターゲットにするのであれば、自社のビジョン、社会への影響、教育プログラムなど大所高所からの情報で共感をと共に、配属先候補の紹介や年次の近い先輩の声の紹介などで、具体的なイメージを持ってもらう
メッセージの具体例
具体的な内容は、ターゲットや媒体などによって異なりますが、採用広報の目的によって、以下のようなメッセージが考えられます。
企業の認知度を高めることに重点を置く場合
企業の認知度を高めて、応募者を増やしたい場合は、第一に企業のことを知ってもらうことに重点を置くべきです。具体的には、次のような情報発信を強化することが考えらえれます。
- 企業が提供している製品やサービス
- 企業の規模や売上高などの具体的な数字
- どこで(具体的な提供場所)、誰に(具体的な顧客像)、どうやって(店舗の写真など)
- 職種に求められるミッション、難しいこと、やりがい
- 企業理念、行動指針
- 代表メッセージ(今回の募集に関するメッセージ)
ミスマッチを防ぐことに重点を置く場合
ミスマッチを防ぐことが目的ならば、社内の雰囲気や実際に働いている社員の思いなど、具体的な情報を知ってもらうことに重点を置くべきです。具体的には、次のような情報発信に重点を置きます。
- 仕事内容、一日の過ごし方
- 職種に求められるミッション、難しいこと、やりがい
- 職場風景、雰囲気、実際に働いている社員の紹介
- 社員へのインタビュー
- 処遇、福利厚生、評価基準、教育体制
採用求人の広報PR活動で参考にしたい事例
採用求人の広報PR活動を積極的に行い、成功させている企業の事例を見ていきましょう。
株式会社メルカリ
日本最大のフリマサービス「メルカリ」を運営する株式会社メルカリの採用オウンドメディアです。
週8〜10本ペースでライトなコンテンツを発信しており、読み応えのある特集記事も週3本ペースで公開しています。
メルカリで働くことの楽しさを紹介することで求人への横暴者を増やすとともに、企業のカルチャーが伝わることで、採用後のミスマッチ防止にも貢献しています。
株式会社サイバーエージェン
https://www.cyberagent.co.jp/way
インターネット広告を中心に広告代理店事業とアドテクノロジー事業を手掛ける株式会社サーバーエージェントの公式オウンドメディアです。求人応募者だけでなく、投資家やその他様々な人にも読んでもらうことを想定し、発信内容を採用に限定せず、技術やサービス、IRなど多岐にわたる点が特徴です。
自社の専門性や事業内容を深く伝えることで、志望意欲の高い求職者を集めることに貢献しています。
パナソニックホールディングス株式会社
https://recruit.jpn.panasonic.com/career
パナソニックは、日本を代表する企業ですが「家電」のイメージがあり、就職先として選ばれにくい課題がありました。そこで、家電以外にも多岐にわたる事業領域があることを知ってもらうために、就職活動の時期にとらわれることなく、押し付け感のない形での情報発信を行っています。
特に、特設ページ「パナソニックの#はたらくってなんだろう」では先輩写真のインタビューを多数掲載し、仕事の内容、文化、精度、メンバーなど、働く場としてのパナソニックを紹介している点が特徴です。
採用求人の広報PR活動の成功事例から見えるポイント
上記に紹介した3社は、いずれも、社風や実際に働いている人たちを紹介する形で、求職者希望者に企業のカルチャーを知ってもらうことに重点をおいています。
社風や働いている人を知ってもらうことは、ミスマッチによる早期退職を防ぐためにも重要です。
また成功事例はいずれも、良い面や綺麗事ばかりを紹介しているわけではなく、大変なことや企業が抱えている課題もオープンにしている点にも注目しましょう。
採用のために企業の外面を糊塗しても、ミスマッチによる早期退社につながってしまうので、マイナスの面も公開することで、一緒に課題に取り組んでくれる仲間を募集するスタンスを取ることが大切です。
中小企業の場合の留意点
今回お伝えして来た進め方や考え方は、企業規模に関わらず基本的に共通するものですが、大企業に比べて人や予算の少ない中小企業においては、何点か大きな留意点があるので、そちらについて簡単にご説明いたします。
採用求人の広報PR活動は企業全体で取り組む
中小企業の場合は、専任の部署を設けることは難しいかもしれません。
しかし、採用広報は本来、広報担当者だけに任せるのではなく、会社全体に取り組むことが大切です。大企業のように毎週何度も情報発信することはできなくても、部署ごとに仕事の内容や欲する人材像も異なるので、部署ごとに持ち回りでコンテンツを作成するという取り組みであれば、負荷を軽減することは可能です。また、情報発信のタイミングも、毎週や毎月が難しければ、入社式、研修風景、新入社員の独り立ち、春夏秋冬のイベント、新商品や新サービスの発売など、特定のタイミングに限定しておけば、予め計画を立てて対応できるので、広報担当者に負荷集中し過ぎて情報発信が滞ることも少なくなります。
また、求職者だけを意識した長い読み物だけでなく、綺麗で読みやすいパンフレットなどを作り、そこに概要を分かり易く掲載し、取引先や一般消費者にも配布したりできれば、情報の拡散度が高まります。そういった取組みをする場合には、会社全体で取り組むことに加え、特に、営業や店員など普段は採用活動への関わりが薄いメンバーにも取組みの趣旨をしっかり伝える必要があります。
広報担当者は、各部署の実態に迫るように掘り下げたインタビューを行い、会社の内外に対してしっかりと情報を発信して行くことが大切です。
採用広報と社内広報は一体で取り組む
採用広報に取り組む際は、社内広報も同時に行うことが重要です。採用広報で発信している情報を社員が知らない状況では、ミスマッチが生じてしまうからです。
最近では、テレワークを始めとしたリモートで仕事する会社も増えており、社員同士のつながりが希薄化している面があります。経営者層が考えていることと現場の社員が考えていることに乖離が生じていたり、広報が社外に発信していることを社内の人間が知らない状況も生じています。
そのような状況では、採用広報が発信する情報を信じて入社した人が違和感を感じてしまうのは当然です。
そこで、採用広報に取り組む前に、社内広報によって、すべての社員に企業のビジョンや目指す方向性を再確認してもらい、社内での一体感を高めておくことが重要になります。
社員へのインタビューも採用広報と社内広報とで同時に発信する
採用広報に際しては、社員へのインタビューを紹介することで、求職者に社内の雰囲気や働き方のイメージを掴んでもらい、ミスマッチを防ぐわけですが、この内容は同時に社内広報でも情報発信すべきです。求職者がどのようなイメージを抱いて入社するのか既存の社員も知っておかなければ、お互いに食い違いが生じてしまうからです。
また、既存の社員にとっても、社内広報により、普段接しない他の部署の人の社内での役割を知ることができ、社内のコミュニケーションを活性化させるのに役立ちます。社長や経営層へのインタビューも、社内に向けて発信することで、経営層と現場の社員との認識を一致させることができます。
このように社内広報を介して、社員同士がお互いの考え方を知っておくことは、風通しのよい企業風土の醸成にも役立ちます。
処遇、福利厚生、評価基準、教育体制を再認識してもらう
採用広報で求職者に約束した処遇、福利厚生、評価基準、教育体制は、確実に実行されなければ、ミスマッチの原因になりますし、全く実施されていない場合は、早期退職された挙げ句、ブラック企業と名指しされる自体になりかねません。
そのため、採用広報で発信している処遇、福利厚生、評価基準、教育体制の情報は、社内でも共有し、実際に実施されていなければなりません。
特に、新入社員の教育を担当する社員に対しては、徹底すべきですし、福利厚生を担う部署も適正な運用を心がける必要があります。
採用求人の広報PR活動で活用したいメディアの代表例
新卒、中途共に求職者は、デジタルメディアを活用して情報収集をするのが当たり前になりました。
企業の採用広報活動もデジタルメディアを活用するのがスタンダードです。
採用広報に際して外せない代表的なデジタルメディアを紹介します。
Wantedly(ウォンテッドリー)
Wantedlyは採用に特化したSNSです。企業は、企業理念や価値観などを自由に発信することができ、求職者の共感を獲得することで、実際の採用活動につなげていきます。ミレニアル世代を中心に330万人以上が登録しているため、次の世代を担う人材獲得のためには外せません。
自社サイトと連動させながら通年で活用したいメディアです。
Indeed(インディード)
Indeedは、求人情報専門の検索エンジンです。その性質上、他の検索エンジンで求人情報を探す場合も、上位表示されることが多いです。Indeedに求人情報を載せると共に有料のスポンサー求人などを利用して上位表示を狙いましょう。
スポットで広告を出すメディアです。
openwork(オープンワーク)
openworkは、企業に関する社員クチコミ情報を提供するメディアです。求職者は、実際に働いている社員のリアルな口コミを知ることができ、社風、働きやすさ、年収を知るための手がかりとして活用しています。
口コミメディアであり、社員クチコミの評価が高いほど、採用活動もしやすくなります。
まとめ
採用求人の広報PR活動で活用できるデジタルメディアはたくさんあるため、さっそく登録して利用を開始したいところだと思いますが、採用戦略を立てないままに登録して情報を入力するだけでは、膨大な企業情報の中に埋もれてしまい、求職者に見つけてもらうことができなくなります。
また、ミスマッチによる早期退職を防ぐためには、社内広報も同時に行う必要があります。
採用求人の広報PR活動に取り組むにあたっては、状況の分析から戦略立案、社内外への情報発信まで、計画的に対応して行くことが重要です。採用広報でお悩みの場合は、弊社へお問い合わせください。