【社内広報】企業文化・社内文化を改革する5ステップ

企業文化 組織文化

先日、あるクライアントから、次のようなご相談をいただきました。

  • 事業承継で引き継いだ会社が閉鎖的・保守的な社内文化で、新しい経営陣が指示をしても「嫌よ」とあっさり断られて驚いた。
  • 今まで何となく自分たちで回して来たものだから、そういうやり方が企業文化になっちゃって、改革を受け入れてもらえない。

企業文化・組織文化は表裏一体の面があり、例えばアットホームかぬるま湯か、切磋琢磨か刺々しいか、感じ方は人によって様々であり、どちらが必ず良いと言い切ることはできません。しかし、文化が事業に対して何らかの悪影響を及ぼしているのであれば、それは改革をして行く必用があります。

良い組織文化が形成されると、例えば、柔軟性と創造性を重視する企業文化では、従業員は新しいアイデアを積極的に出し合い、チャレンジ精神を持って取り組むようになります。また、顧客志向の企業文化が形成されると、従業員は顧客のニーズを理解し、サービス品質の向上に努めるようになります。
企業文化・組織文化は組織の雰囲気や働き方にも影響を与えます。たとえば、アットホームな雰囲気を持つ文化が形成されると、従業員同士の関係が和やかであり、助け合うようになります。反対に、ライバル関係のような雰囲気を持つ文化が形成されると、同じ組織内であっても勝つことにこだわり、切磋琢磨し合うようになります。

このように文化はその組織の在り方に大きく影響を与え、組織全体の成功に大きく寄与します。
本コラムでは、目に見えないけれど事業に極めて大きな影響を与える企業文化・組織文化について解説します。

【社内広報】企業文化・社内文化を改革する5ステップ

「強い組織文化」の5つの特徴

前述の通り、企業文化・組織文化は、捉え方によって良くも悪くもなりますが、風通しが良く業績も良い企業を観察していると、下記のような文化が共有されていることが多いです。

ビジョンと価値観の共有

組織全体に対して、明確なビジョンや価値観が共有されていると、強い組織文化の形成に繋がりやすいです。それらの共有により、組織の目標や方向性、行動指針が一致し、メンバーは共通の目的に向かって集中して取り組むことができるようになります。

働きやすい環境

特にソフト面において、メンバーが心理的に安心して働ける環境を提供していると、強い組織文化の形成に繋がりやすいです。例えば、オープンなコミュニケーション、相互尊重(頭ごなしに否定されない)、チームワークの促進などにより、メンバーの相互協力を促進しているなどです。これらの環境により、チーム全体としての成長やパフォーマンスの向上が促進される可能性が高まります。

高い倫理観とプロフェッショナリズム

高い倫理観とプロフェッショナリズムが求められていると、強い組織文化の形成に繋がりやすいです。メンバーは倫理的な行動を求められ、組織全体が公正さや誠実さを重んじるとともに、ハイパフォーマンスと高度な成果を求められます。こういった要求の高さは、メンバーが心理的に安心して働ける環境と表裏一体であることが重要です。また、メンバーにはプロフェッショナリズムを実現するために専門性を高めるためのトレーニングや成長機会が提供されることが求められます。

革新と挑戦

組織として革新と挑戦を奨励することも、強い組織文化の形成に繋がりやすいです。例えば、新しいアイデアが歓迎されて、失敗を恐れず新たなアプローチや改善を試みることが評価されることなどです。その結果、組織は環境の変化に対応し、成長と競争力の維持が実現できるようになります。

社会的責任と社会貢献

社会的責任と社会貢献を重視することも、強い組織文化の形成に繋がりやすいです。組織が社会や環境への影響を考慮し、事業を通じた社会課題の解決、地域社会への貢献、持続可能なビジネスの実践などに積極的に取り組む場合、メンバーも企業や社会の一員として、社会的価値を創造することを目指す中で一体感を感じるようになります。


それぞれの組織によって表現は違いますし、当初の段階では明文化されていないことの方が多いですが、要約すると、企業の視点、従業員の視点、社会の視点を持ち、高い目標に向けて挑戦し続けるのが文化は、組織を成長させる強い原動力となっているようです。

「強い文化」が作られる3つの背景

経営戦略の文脈では、下記のような要素があると、良い企業文化が作られやすいと言われています。

創業者のビジョンとリーダーシップ

良い文化は、創業者や経営者のビジョンとリーダーシップによって形成されます。創業者が明確な目標や価値観を持ち、それを組織に伝え、自身の行動で示すことで、従業員に影響を与えます。例えば、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズは、デザインや革新性に対する情熱を持ち、その情熱を組織に伝えることで強い企業文化を築きました。

長期的な組織の成功と伝統

組織の長期的な成功と伝統によっても形成されます。組織が長い歴史を持ち、成功を継続してきた場合、共有の価値観や行動のパターンが確立され、強い企業文化が生まれます。例えば、日本の自動車メーカーであるトヨタは、品質と効率性への追求を重視する企業文化を長年にわたって築き上げてきました。

従業員参加と共感

従業員が積極的に参加し、共感を持つことで形成されることもあります。従業員が組織のビジョンや目標に共感し、自らのアイデアや意見を組織に反映させる機会を得る場合、組織全体で強い結束力と共有の価値観が生まれます。例えば、Googleは従業員の創造性を重視し、自由な意見やアイデアの提案を奨励する文化を持っています。

強い企業文化・組織文化のメリット

強い文化には、以下のようなメリットがあります。

メンバーの結束力と協力が高まる

強い企業文化は、組織内の従業員を結束させ、共通の目標に向かって協力することを促進します。従業員は一体感を持ち、チームワークが高まり、組織のパフォーマンス向上につながります。

組織のアイデンティティとブランド価値が高まる

強い企業文化は、組織のアイデンティティを形成し、ブランド価値を高める効果があります。従業員や顧客は、その企業の独自性や価値観を認識し、組織に忠誠心を持ちやすくなります。

強い企業文化・組織文化のデメリット

企業文化・組織文化が強いことは、常に良い結果ばかりを生む訳ではありません。以下のようなデメリットが生じることに、十分な注意をする必要があります。

変革への強い抵抗となる

強い企業文化は、冒頭の例のように、新しいアイデアや変革に対して保守的な姿勢を示すことがあります。これは、新しい手法や市場の変化に対して適応性が低下する可能性があるため、競争力やイノベーションの面での制約になることがあります。

組織の同質化が進み、多様性への認識が不足する

強い企業文化は、特定の価値観や行動パターンに偏る傾向があります。これにより、異なるバックグラウンドや視点を持つ人々の多様性が十分に認識されず、組織内の多様性や包括性に欠ける場合があります。これは、更なる組織文化の硬直化や人手不足の深刻化などの問題を引き起こす可能性があります。

強い企業文化・組織文化を作るためには、バランスと柔軟性が重要

強い企業文化・組織文化は、組織の結束力やブランド価値を高める一方で、変革への柔軟性や多様性を制限する可能性があります。
組織は、上記のメリットとデメリットに対してバランスを取りながら、経営環境の中でより強くメリットを発揮できるよう強い文化を作るための努力を行うことが重要です。

なぜ、企業文化・組織文化の停滞、硬直化、弱体化が生じるのか?

企業文化・組織文化は、お金で買ってこれる物ではないので、一度、強い文化を構築できたら、簡単には他者が真似のできない強味になります。しかし、せっかく構築した強い文化も、永遠ではありません。必ずいつか、停滞、硬直化、弱体化の魔の手が忍び込むことになります。

リーダーシップやコミュニケーションの欠如

リーダー層がビジョンや価値観を明確に伝えず、組織全体の方向性を定めない場合、チームやメンバーは文化についての指針やガイドラインを欠いたままになり、「強い文化」に向かって進むことが困難になります。組織内のコミュニケーションが不足し、メンバーにビジョンや価値観伝わらない場合も同様です。

組織内での負の行動や慣習

組織内での負の行動や慣習が文化の停滞を引き起こすこともあります。例えば、個人の利益追求や不正行為の容認、わがままやいい加減な言動を放置、過度な放任主義が横行すると、組織に対する信頼感が大きく棄損され、健全な文化を形成することが困難になります。

変化の欠如

組織が新しい課題や市場の変化に適応できず、今のやり方に固執すると、文化も停滞し組織全体も停滞した状態になります。

成長それ自体

成長それ自体も文化の停滞、硬直化、弱体化を引き起こす場合があります。特に、業績の急拡大に応じた体制や改革を是とする企業文化・組織文化を戦略的に構築することができない場合、当初の成功に固執してしまい、新しいビジネスチャンスに対応した変化を受け入れられない、硬直的な企業文化・組織文化が形成される場合があります。

組織文化を改革する5つのステップ

企業文化・組織文化の改革において、社内広報は極めて重要な要素です。メンバーの参加と協力を引き出し、改革を成功させるためには、望ましい企業文化が浸透するように繰り返し経営と一体となってメッセージを発信し続けることが不可欠です。

また、社内広報をしっかり行えば、価値観、事業内容、意思決定プロセスなど様々な情報が整理された状態で蓄積されるため、長期間が経過したり人が入れ替わったりした後も、企業文化・組織文化の曲解や形骸化が生じにくくなります。

経営からのビジョンを共有する

方向性や目標を明確にするため、社内広報チャネルを活用して経営からメンバーに対して直接メッセージを共有します。特に、改革の背景、ビジョン、目的、求めることなどは、トップが自分の言葉で具体的に伝えることで、メンバーが改革の重要性を理解し、共感を持ちやすくなります。
職種や事業環境によっては、全メンバーに対しトップが直接伝えるのは難しい場合もあると思いますが、最近はGoProなど簡単に撮影できる安価なカメラもありますし、Zoomのレコーディング機能YouTubeMicrosoft Streamなど、特別な知識が無くても動画を共有できるサービスもあります。こういったサービスを利用して、年頭訓示、月次朝礼、重要会議などで繰り返しメッセージを伝えることで、メンバーに浸透を図ります。

コミュニケーションを活性化させる

進捗状況や意思決定のプロセスをメンバーと共有します。社内報やニュースレター、社内SNSなどのツールを活用し、上手く行っている点も苦労している点も伝えることで情報の透明性を高め、メンバーの関与を促します。
また、メンバーからのフィードバックや質問への返信など、できるだけメンバーとの双方向のコミュニケーションを心掛けましょう。

成功事例を共有する

成果や成功事例は、メンバーに対し積極的に伝えます。社内広報で具体的な事例を紹介し、関連部門や個人の取り組みを称えることで、改革の意義や成果を示します。特に、目指す企業文化・組織文化を体現した行動により実現した成果は、できるだけ具体的に紹介しましょう。可能であれば、成功事例のキーパーソンに登場してもらえると、より臨場感のある情報になり、従業員の関心を惹けます。大きな意義のある事例であれば、全体会議などでトップから直接紹介してもらっても良いでしょう。
成功事例は他の従業員にも影響を与え、積極的な変化への参加を促す効果があります。

教育・トレーニングを提供する

改革に関連する制度や仕組みの理解、スキルや知識の習得をサポートするため、社内広報を通じて教育やトレーニングの情報を提供します。組織のサポートについてメンバーにも十分な理解が得られなければ、「自分には関係無い」と他人事と捉えられ、改革が停滞する可能性があります。なので、改革に必要な能力やツール、プロセスについての情報を共有し、メンバーの成長と改革への準備に必要な情報をしっかりと伝えます。
また、教育・トレーニングの機会提供と平行し、評価基準に組み込むことで(特に行動評価)、メンバーに対しその必要性をより強く認識してもらうことも重要です。

メンバーの声を反映させる

改革に関するメンバーの声や意見を積極的に収集し、社内広報で共有します。どんなに緻密に計画を立てても、やってみたら予想外の出来事は必ず起きます。そういった出来事を学びの機会とするとともに、それに関わるメンバーの声を反映させることで、実態に合った改革になります。アンケートやフィードバックセッション、定期的な個人面談などの手段を活用し、メンバーの声を拾い集めるようにしましょう。メンバーに対し「自分の声が意味を持っている」と伝われば、企業文化・組織文化の改革に向けた参加意欲へと繋がります。

まとめ

企業文化・組織文化の改革は、停滞、硬直化、弱体化に気付いた一部の有志による問題意識が発端になることがあります。

メンバーからボトムアップで改革が始まるのは、それ自体、素晴らしい企業文化・組織文化です。しかし、そういった大きな変革を一部のメンバーに任せきりにすると、必ず、他のメンバーに対する他人事感や情報格差へと繋がり、改革が難航するシーンが出てきます。

ですから、企業全体・組織全体の文化を改革する場合には、例え発端は一部の有志メンバーだったとしても、本格的に活動する段階では必ず広報PR部門を参画させ、しっかりと社内広報して行くことが重要です。特に、経営層からのメッセージ、メンバーに求めること、制度などについては、広報PRが主幹となって情報を発信することで、社内に情報格差が生じないようにするすることが不可欠であり、そういったコントロールができる強い広報PRの存在は、企業文化・組織文化の改革を成功させるための大きな要素です。

文化を改革する必要性を感じておられながら、そういった社内広報のノウハウが無いことにお悩みの方は、ぜひ弊社にご相談ください。弊社は広報PRのコンサルタントであるとともに、代表は中小企業診断士でもあり、中小ベンチャーの経営に関する専門家でもあります。貴社のご状況に合わせ、広報PR組織の立上げから文化の改革まで、ワンストップでご支援をいたします。

著者のイメージ画像

花村広報戦略合同会社
花村 憲太郎(Kentaro Hanamura)

15以上の仕事を経験後、サービス業のカスタマーケア部門のマネージャーとして、従業員教育や顧客満足度の向上に関わる各種施策を担当。平行して、中小企業診断士としてスモール・ミドルへのコンサルティングを経験。その後、自社と社外の任意団体で広報を担当し、プレスリリース、記者会見、メディア対応などを実施。 社内外での広報PRと経営の支援を通じ、広報戦略と経営戦略との一体的な対応により、自社の魅力を継続的に社内外に伝えることが重要であるとの想いを強くし、起業に至る。