メディアからの取材対応 広報PR担当者が抑える6つのポイント
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これまで3回にわたり、広報PRを担当されている方向けにプレスリリースの書き方を解説して来ました。
私自身も基本的にはこの記事の通りにプレスリリースを作成しておりますし、一つ一つのポイントを押さえて何度か作成していただければ、きっと良いものができると思います。
今回は、そうやって作成したプレスリリースが成功し、取材連絡が来た時に、具体的にどういった対応をすれば良いかについて、解説をします。
なお、なるべく時間をかけず広報PRを実施し、取材に辿り着きたいという方についても、ポイントをお伝えしますので、参考にしていただければ幸いです。
メディアからの取材対応 広報PR担当者が抑える6つのポイント
プレスリリースから取材までの流れ
プレスリリースの企画から取材までの基本的な流れを整理すると、以下の通りです。
- 目的の設定
- 計画の策定(時期、人員、予算など)
- ニュースバリューの発掘(無ければ作る)
- 根拠情報や説明資料の作成
- プレスリリースの作成
- 配信リスト、対応方針、QA、取材時確認票、トークスクリプトの作成
- プレスリリースの配信、自社WEBサイトへの公開
- 取材連絡への対応、各種確認、取材準備
- 取材対応
- アフターフォロー
取材の連絡が来ることはとても嬉しいですが、前工程までの流れと記者の取材意図を踏まえて、後工程で適切な対応ができるようにしっかり準備を行い、充実した取材になるようにしましょう。
メディア・報道機関から電話で取材連絡があったら
企業側から送ったプレスリリースに対して取材連絡が入ったら、送った企業には原則として対応する義務があります。プレスリリースの連絡先欄にはできれば広報PR担当者の直通携帯番号を記載し、取材連絡に優先対応できるようプレスリリースを送ってから1か月程度はスケジュールを調整しておく、といった対応をすると良いでしょう。
また、実際に取材連絡が入った際は、以下の3点は必須事項です。
窓口で記者を長く待たせたりたらい回しにしたりしない。
即答できない場合には折り返しにし、記者の時間を無駄にしないようにする。
事実と意見はしっかり別けて、情報に間違いが無いようにする。
「報道してもらいたい」と思ってつい大きく言ってしまわないように、アピールポイントは事前に整理しておき、分からないことは確認をしてから回答する。
必ず相手の会社や連絡先などを聞いておく。
万一誤案内をしてしまった場合に速やかに訂正するほか、取材連絡後のプッシュや進捗確認ができるようにする。
対面取材の申込があったら
メディア・報道機関から対面取材の申込があったら、余程のことが無い限りは受けるようにしましょう。
ただし、最近はネットメディアやSNSのインフルエンサー、ユーチューバーなど、従来のメディア・報道機関とは異なる情報配信者も増えています。そういった中で、掲載されたメディアが猥雑な記事と混在していたり、記事の取材だと思って受けたら広告掲載料を請求されたり、といった話しを聞くこともあります。対面取材の申込があったらそのまま即受けるのでは無く、まずは基本的な情報は確認しておきましょう。
最低限、事前にこれだけは確認したい
記者は通常、電話やメールで取材の意思を伝えて来ますが、いずれの場合でも、最低限、下記の5点は記者に確認しておきましょう。
- メディア・媒体の名前、掲載されるコーナー
- 記者の名前、所属部署、連絡先(電話番号、メールアドレス)
- 取材の背景や目的(「プレスリリースを見たから」では無く、メディア側の興味のポイント)
- 取材相手(自社の誰に取材をしたいのか)
- 取材希望日時、所要時間
できれば、事前に取材企画や主要質問も確認したい
最低限確認したい情報を抑えたら、できれば、取材企画書や主要質問事項も、事前に送っていただけないか確認しましょう。
主要な質問事項を把握することで、その場で訊かれたら即答できない質問が混じっていた場合でも事前確認しておくことができますし、質問に関連して、自社の側で大きくアピールできる要素が見付かる場合もあります。メールやFAXなどでいただけないか、打診してみると良いです。
ゴールの設定
基本的な確認事項、取材企画、主要質問などを押さえたら、それらを踏まえて、頭の中に掲載記事=ゴールをイメージしてみます。
このゴールは、基本的には上記『プレスリリースから取材までの流れ』で設定した目的の達成に繋がるものとなるはずですが、メディア・報道機関の意図によっては、柔軟に変更して行くことも重要です。
具体的には、まず掲載時の見出しを自分で作ってみて、その見出しの論調や入っていて欲しいキーワードまで考えます。次に、その見出しが実際の紙面になるためには、取材の時にどんな話しをすれば良いかを考えます。
もちろん、メディア・報道機関には彼ら・彼女らの取材意図があるので、企業側から一方的に話しているだけでは取材にならず、紙面にも載りません。そのため、事前にその取材意図を確認することで、そこからズレない範囲で、でも企業側で強調したい情報を象徴するキーワードを考えておくなどすることが重要です。
「相手の取材意図を知る → ゴール(見出し)を設定する → FAQを含めたコンテンツを考える」の順番であり、決して逆ではないことに注意してください。
コンテンツの作成
プレスリリースの前提として何らかの分析やアンケートのレポートがある場合は、詳細はそれを使って説明するとして、この段階では、取材連絡時にヒアリングした内容を踏まえ、直前で作成するコンテンツについて注意点をお伝えします。
取材時、メディア・報道機関に渡す資料のミニマムセットは下記の5点です。
- 最新版の会社案内(沿革、事業内容、自社の強み、プレスリリース内容に対する普段の取り組み)
- 対面取材出席者の氏名や略歴の一覧
- タイムテーブル(設営、社内案内、個別インタビュー、写真撮影、実機操作、その他)
- プレスリリースそのもの
- プレスリリースの詳細レポートや実物・実機
ポイントは、上記のセットをただ作るだけで無く、取材意図に照らし合わせながら、理想とする見出しを実現させるために必要なキーワードを盛り込んだり、情報を強調したりすることで、メディア・報道機関の興味を自然とゴールに向けることです。
また、自社向けとしては、上記の他にQ&Aも用意しておくと良いでしょう。
Q&Aについて
基本的に取材対応時には、数値などの細かい情報は、確認のため紙面で持ち込むのも止むを得ませんが、Q&Aペーパーの持ち込みは、カンニングペーパーを読んでいるだけのように見えて感じが悪いので避けた方が無難です。ですから、Q&A作成時にはあまり細かくなり過ぎないように注意しながら、以下のポイントを押さえて作成し、いちいち紙を見ないでも応えられるように、事前に関係者で読み合わせをしておくと良いです。
- 大きな方針を見失わないように、冒頭に目的、対応方針、キーワード、重要な数値などを書いておく。
- 質疑応答をランダムに書くと頭に入らないので、あいうえお順やカテゴリ別など、一定の法則性に合わせて作成する(会社の標準に合わせるだけで無く、取材対応者にも必ず確認しておく)
- 伝えるべきメッセージとともに、伝えられないメッセージと代替案も記載しておく
取材対応時の注意点
対面取材では、広報PR担当者が直接取材を受けるか、事業部の担当者の取材に立ち会うか、いずれの場合でも、メールなどへの一方的な回答では無く、記者との双方向のやり取りに参加することになります。ここでは、そういったメディア・報道機関との双方向のやり取りにおける注意点をお伝えします。
受動的に質問に答えるだけで無く、戦略的にメッセージを伝える
慣れていないと、「取材=質問に答える場」と誤解される方がいらっしゃいますが、そうではありません。大前提として、もし「取材=質問に答える場」であるなら、メールのやり取りだけで済むはずです。そうでは無くわざわざ対面の取材に来ているという時点で、メディア・報道機関の側でも、もっと深く掘り下げよう、具体的な話しを聴いてみよう、背景や気持ちを知りたい、といった何らかの意図がある訳です。
広報PRの目的は、企業のメッセージやアピールしたいことを、メディア・報道機関を通じ、その先にいる読者・視聴者に伝える事です。ですから、上記のような記者との双方向のやり取りの中で戦略的にメッセージを伝えて行くことは、何もおかしなことではありません。
ただ、上述の通り、そもそもの取材意図とかけ離れたことを勝手に話し続けていては取材になりませんし、当然、掲載もされません。また、取材意図と合っていても、印象に残るようなメッセージになっていなければ、採用はされにくいです。
メッセージについて抑えるポイントは、以下の3点です。
- 伝えたいことを象徴する、強く短いメッセージを2~3個くらい用意しておく。
- 上記のメッセージに喰い付いて来た時のために、数字や実機操作など、説得力のある客観的な根拠を用意しておく。
- 質疑応答の全体ストーリー、コントロールや軌道修正の方法、メッセージを伝えるタイミングなどを具体的にイメージしておく。
インタビュー内容と関連付けて伝え、伝わったことを確認する
入念に準備をしてしっかり応えると、ついつい、それだけで伝わったと思ってしまいがちですが、実際にはそうではありません。
皆さんも何度も経験があると思いますが、人間は、自分の関心がある事や聴きたいことはしっかり聴いていても、他のことは聴こえていません。ですから、取材の場で一生懸命アピールしても、記者の取材意図とズレが大きければ記憶に残りませんし、当然、記事にもなりません。
そうならないための注意点は以下の4点です。
- 重要なメッセージを伝える前には「重要なポイントは」などと強調し、事後に「今ので回答になっていますでしょうか?」と確認する。
- 1度伝えたら終わりでは無く、不自然にならない程度に、取材中に何度も伝える。できれば、序盤と終盤には最低2回くらいは伝えたい。
- メッセージと取材意図にズレがあると予め分かりながら伝える時は、「ご質問の趣旨と少しズレるかもしれませんが」などと前置きする。
- 終盤に、「今回、弊社が特にお伝えしたい事は」などと強調してメッセージを再度伝える。
特に最後の点は、取材時間が長いと色々な内容が話題に挙がり、前半に伝えたメッセージがぼやけている場合があるので、ぜひ実施しましょう。
場合によっては、メッセージを含んだ回答の要約を紙で渡したり、フォローメールで伝えたりして良いでしょう(ですが、できるだけ取材対応中に伝えるのがベストです)
分かり易く説明する
記者も人間なので一般的な感覚で「分かり易く」を心掛ければOKですが、以下の3つのポイントは強く意識しましょう。
アンサーファースト、KISSの法則、論理的な説明を心掛ける
アンサーファーストとは、結論から先に、重要なことから先に話し、根拠や構成要素は必要に応じて伝える、ということ。KISSの法則とは、Keep it short and simple.」の略。「論理的な説明」と言えば難しく聞こえるかもしれませんが、「結論は~」「その根拠は~」「大事なことは~」など、何を伝えるかを明確にしながら話すだけで十分です。
つまり、結論から先に、簡潔に、明確に話すことが重要であり、その中にメッセージを含めて行くことで記者の印象に残りやすくなります。
副詞を使わない
言葉で論理的に伝えることが仕事である記者に対して「かなり」や「非常に」といった副詞で説明すると、具体的にどの程度なのか分からず、かえって説得力を失うので、できるだけ使わないようにしましょう。
業界用語や専門用語を使わない
メディアによっては詳しい記者もいますが、基本的に、相手がそういった言葉を知っている前提で話をするのは危険です。知らないまま話しが進めば興味を失わせますし、知っているつもりでも両者の理解が違っている場合もあります。
とはいえ、場合によっては最低限の専門用語を使わなければ、かえって分かり難くなるという場合もあります。そういった場合には、事前に説明書きを渡すなどしておきましょう。
テレビの取材における注意点
活字メディアとは違い、映像の伴うテレビの場合には、特有の注意点があります。
例えば、活字メディアの場合は事実や数字といった情報が好まれやすいですが、テレビの場合はどんな絵が撮れるか、その絵がいかにユニークであるか、インパクトのある取材やコメントが得られるかが重要です。
また、テレビは「ながらメディア」の代表と言われており、食事をしながら、家事をしながら、育児をしながら、何となくお酒を飲みながら見ている人も少なくありません。そういった視聴者にもしっかり伝えるためには、ソフトに微笑みながら(クライシスコミュニケーションは除く)、キーワードはゆっくりと、落ち着いた低いトーンで、カメラの向こうにいる視聴者を見詰めながら、1対1で話しかけるように話すことが効果的です。つい忘れられがちなことですが、スーツやネクタイ、髪や髭などの身だしなみ、背筋を伸ばすことなども重要です。
プレスリリースの目的と達成手段
冒頭でお伝えした通り、プレスリリースは広報PRの手段の一つです。目的は、取材を受け、掲載を実現することです。もっと言えば、掲載により企業としての目標、広報戦略としての目標を達成して行くことです。
しかし、慣れないうちはメディア・報道機関からの取材連絡があると、つい舞い上がって通り一遍のQ&Aを作るだけで終わってしまうことも少なくありません。そして、そうならないため重要なのは、常日頃から会社全体の方向性や広報PRの目的を常に確認し、常に目的を念頭に置きながら、プレスリリースをはじめとした広報PR活動を行うことです。
とはいえ、上記のような広報PR活動は、決して簡単ではありません。
例えば対面取材一つとっても、通常、連絡を受けてから実際に取材するのは早ければ当日~1週間くらいがほとんどであり、他にも様々な業務を抱えながら、今回紹介した取材準備をその前に終える必要があります。予め準備しておくこと無しでは対応不可能であり、年次の経営計画に盛り込んで、組織を作り、確実にPDCAを回して行く必要があります。
まとめ
もし貴社がこれから広報PRを強化して行くのであれば、特に初期段階では専門家のサポートを受けることをお勧めします。将来的に広報PRの自走化を目指すのであれば、最初から外部に「丸投げ」してしまうのは最悪の選択です。しかし、「丸抱え」してしまうことは次悪の選択です。ノウハウが無いのに丸抱えしてしまうと、広報活動に無理・無駄・ムラが発生してしまい、成果が出るのに膨大な時間を要します。ですから、そうならないように初期段階から、自社の経営状況に合った専門家のサポートを受け、成果と比例して徐々に自社の体制を充実させ、対応範囲を拡大して行くことをお勧めしております。
お伝えして来た通り、広報PRは経営戦略と密接不可分です。ニュースバリューとなる情報を把握するためには会社の様々な情報の流通経路の整理が不可欠ですし、ビジョンやミッションから人員体制まで、トータルで考えて行く必要があります。
参考までに弊社は、代表が中小企業診断士であり、埼玉県商工会連合会のエキスパートバンク登録専門家でもありますので、企業の経営戦略から広報の実行段階まで、トータルでご支援が可能です。これから広報PRを強化して行きたいという企業様に対しては、戦略構築や組織作りと広報実務を平行して支援することで、成果を出しながら自走化できるように貴社へ伴走いたします。
ぜひ、お気軽にご相談いただければ幸いです。