刺さるプレスリリースの書き方/メディアに掲載される7つの理由
(参考記事)
広報PRをご担当されている方であれば、プレスリリースを書くとき、「大事な情報に絞って」「ニュースバリューを強調して」などと言われる方は少なく無いと思います。しかし、皆さんきっと一度は、「具体的に何を書けば良いんだよ!?」と思われたことがあるのではないでしょうか。
お金を払って掲載してもらう広告とは違い、プレスリリースはメディアに対しどこにどんなニュースバリューがあるのかを明確に伝える必要があります。今回は、このニュースバリューのポイントと、それを盛り込むうえでの留意点を解説します。
刺さるプレスリリースの書き方/メディアに掲載される7つの理由
ニュースバリューとは
ニュースバリューとは、メディアや報道機関に対して、「この商品やサービスは○○の点で取材する価値・報道する価値がありますよ」とお知らせすることです。
プレスリリースを書く時に具体的にどんなニュースバリューを強調すべきかは、それぞれの商品やサービスの特長によって全く変わるので、一概には言えません。しかし、ニュースバリューとして検討するポイントは、大きく7つに集約されます。今回は、広報PRの担当者として押さえておくべきこのポイントを、具体例を交えながら解説します。
新規性:新しいアイデアや概念、商品、技術として、従来のものとは異なる独創性や革新性
「新しいアイディア」と言うと、難しく聞こえるかもしれません。確かに、現代社会には様々なものが溢れかえっているので、「世界初」の新しいアイディアなどほとんどありません。
そのような場合に効果的なのは、切り口を限定することで、その切り口の中で新規性を訴求することです。
マーケティングの分野には、『アメリア・イアハート効果』という言葉があります。
1927年に大西洋横断単独飛行に成功したチャールズ・リンドバーグの名前を知らない人は、ほとんどいないと思いますが、その後現在に至るまでの間、リンドバーグよりはるかに長い距離を飛行した数多くのパイロットの名前を知っている人は、ほとんどいないでしょう。
ところが、1932年に大西洋横断単独飛行に成功したアメリア・イアハートだけは、彼ら数多くのパイロットと違ってアメリカでは英雄扱いされており、2009年には「アメリア 永遠の翼」として映画まで公開されました。
なぜか? それは、アメリアが女性として初めて大西洋横断単独飛行に成功したからです。
切り口を変えたら新規になれる商品やサービスは、少なくありません。「世界初」で無ければ「日本初」、「日本初」で無ければ「埼玉初」。あるいは、「業界初」など分野別でも、「初めて」はそれだけで注目を集めやすいです。
自社の商品やサービスに対し、「初めて」と言える要素は無いか、色んな視点から検討してみましょう。
時事性:最新の出来事や問題、その時々のトレンドに密接に関連する内容
自社でコントロールしやすいも時事性しては、「創業○周年」「△発売記念」などのタイミングがあります。一方、自社で準備不要なものとしては、卒業、入社、お花見、ゴールデンウイーク、夏、紅葉、クリスマス、お正月、などのタイミングがあります。一般消費者向けの商品を扱っている場合は、差別化するのは大変ですが、こういったタイミングで企画を打ちやすいです。あまりふざけ過ぎると逆効果ですが、エイプリルフールにジョークを交えながら企画を打つのも一つの方法です。
他のタイミングとしては、社会的な出来事と自社を関連付けする方法もあります。例えば、2022年は日中国交正常化50周年であり、飲食店、特に中華料理店であれば、上記に関連したイベントは注目されやすいタイミングだったのではないでしょうか。また、ウクライナ侵攻のような出来事でも、発生してすぐに売上の一部を寄付するイベントを立ち上げれば、社会的意義が大きく、注目をされやすかったと思われます。
時流にマッチした情報であることをアピールできれば、メディアに掲載される可能性は高まります。何か自社に関連するイベントは無いか、ぜひ調べてみましょう。
専門性:特定の分野や領域に有する深い知識や技能、経験、高い能力など
メディアや取引先などに対し、対外的に専門性を認知させる方法としては、以下の様なアプローチが有効です。
人物とスタンスを明確にする。
誰の発言か分からない状態では、どんなに専門的な発言をしても信用されにくいですし、そもそも注目を集めることは困難です。
継続的に情報を発信する。
自社のWEBサイトがあればそこで発信するのが良いですが、無い場合は、noteのようなブログやFacebookのような長文を投稿可能なSNSでも良いです。
イベント登壇など人前に顔を見せる。
講演会、セミナー、その他のイベントを開催したり、他社主催のイベントに登壇したりして、専門的な情報を発信することで、業界関係者内で専門家としての認識を広めていきます。
外部の専門家と連携する。
例えば、業界関係者向けに講演会を開きたいけれど、自社単独では専門性が十分では無い、といった場合には、外部の専門家を招聘することが有効です。近隣に大学があるならその大学の先生、下請け会社なら元請けの技術者、その他の専門家に登壇いただければ、自社の不足を補うだけで無く、そういった外部専門家とのネットワークがあると認知されます。
専門性の認知に繋がるポイント
ポイントは、上記のようなアプローチを組み合わせて実施することです。
まずは、自社の専門分野についての情報をWEBサイトに掲載する。小規模でもイベントを開催したら、その内容や様子も掲載する。そうやってある程度実績が蓄積できたら、それを見せながら「業界の発展のために」として外部専門家に登壇してもらい、その様子もWEBサイトに掲載する。
WEBサイトが無ければ上記のようなブログやSNSでも構いませんし、それも難しければ、定期的にレポートを作って社内外の関係者に配布します。自社のWEBサイトがあった方が情報を蓄積・集約しやすいですが、ユーザーの年齢層などによっては、紙で渡した方がその場で見て印象に残り、専門性への高評価につながる場合もあります。
「専門性」は、ある日突然確立することはできませんが、一度認知されれば、その後そんなにアピールしなくても、その話題が出た時には自社に問合せが入る可能性があります。
地道な作業ですが、ぜひ取り組むことをお勧めします。
意外性:予想外の展開や結果、驚きや興味を引く要素など
意外性は、大きく以下の2パターンに集約できます。
- 常識の否定(△と思われているけれど、、、)
- 二面性の提示(この人が実は、、、)
既知の情報でも、あまり知られていなければ意外に感じることはあります。要は、メディアや視聴者、世間一般が持っている常識、想定される反応に対して、真っ向から否定する事実を提示することができれば、強い意外性に繋がります。
ポイントは、相手を否定せず、根拠事実をしっかりと提示することです。
人間は誰でも自分の持っている認識、感覚、常識を否定されたら、初期反応としてそれに抗おうとします。ですから、例えば研究結果、例えばアンケート結果、例えば統計情報など、自説の根拠となる客観的な事実の提示は不可欠です。相手を否定せず、興味・共感を持ってもらいながら、その内容については客観的な根拠を示すことができれば、意外性を受け入れてもらいやすくなります。
人間性:優れた性質や美徳、道徳的な規範や倫理観、あるいは泥臭い努力など、人間性の現れ
プレスリリースの背景として、NHK『NHK プロジェクトX』のような成功や失敗、失敗からの逆転など、共感できるストーリーが伝われば取り上げられる可能性が生まれます。
いかに優れた商品やサービスでも、人間は、良いところ・綺麗なところだけを見せられたら共感しにくいものです。もちろん、ストーリーへの共感は無くても、商品やサービスの素晴らしさ、社会的課題に対し与えるインパクトの大きさなどで、メディアに掲載される例は沢山あります。しかし、その一方で、苦労の末に仲間の協力を得てようやく成功したといった人間臭いストーリーがあれば、それを自分に照らし合わせて興味を持ちやすくなります。
きっかけとなった問題意識や使命感、繰り返された失敗、諦めず頑張れた理由、喜んでくれた顧客の声など、人間性が現れるストーリーがあれば、ぜひそれを打ち出しましょう。
また、もう一つの視点として、出来事やストーリーだけで無く、組織(チーム)や人にフォーカスを当てることで、人間性が更に際立ちます。例えば、その事業を牽引した事業部長、開発主任、二代目経営者などのキーマンがいるなら、ぜひ前面に立ってもらいましょう。
重要性:地域や社会などの公共に対し、重要な影響をもたらす可能性があること
難病に対する治療薬の発明などであれば分かり易いですが、そこまで大きな話しでは無くても、ある一定の地域、業種、業界などにおける課題の解決策になることが伝われば、内容やタイミングによっては社会的に重要と評価されることもあります。
例えばあるコールセンターでは、採用難対策として、セキュリティを十分に確保することで顧客データを取り扱う業務を在宅で行える仕組みの構築を進めていました。
業界に先駆けた取り組みではありましたが、最初は、特に注目された訳ではありません。しかし、コロナ以降、労働集約型事業であるコールセンターのコロナ罹患リスクが報道され、社会的な注目度が高まったことで、在宅コールセンターへの注目も高まりました。そういった環境の変化を踏まえ、以前行ったプレスリリースを少し書き直して配信したところ、大手新聞の地域面に加えて、地元TV局からの取材も入り、注目を集めることができました。
このように、「重要性」はその時々で変わり、同じ内容であっても状況が変われば評価が変わる場合があります。社会的な変化を踏まえて、「それは自社の商品やサービスにどんな影響があるか」を常に検討すると良いでしょう。
地域性:ある地域の独自文化、風土、歴史、その地域でしか見られない習慣や言葉など
新聞なら地方紙や、大手の地域面など、報道機関には必ずローカルニュースの枠があり、その枠の中で取り上げてもらうことを目指します。
ローカルニュース枠なので、地元との密接なつながりが極めて重要です。地元で生まれ育ったといった背景があれば良いですが、無いなら作りましょう。具体的には、商工会や商店会に入会して催しに積極的に顔を出す、といったことでも良いです。飲食店なら地元食材を使った地元を連想させるメニューを作ったり、サービス業なら、地元の小中学生を職場体験で受け入れたり、といった方法もあります。
また、地元のメディアを定期的に訪問し、例えば「地域興しで地元名産品を使ったこういう商品を作ったので、地元の取材の際に取り上げてください」と声をかけておくのも有効です。
まとめ
プレスリリースは広告ではありません。したがって、自社の商品やサービスがどんなに優れていても、単にそれをアピールするだけの自慢話のような内容では、メディアに取り上げられることはありません。重要なのは、その優れた商品やサービスが、どのような社会的課題に対しどのようなインパクトを与えるかであり、そのインパクトが大きいと分かり易く伝えることができれば、取材や掲載に繋がる可能性も高まります。
今回お伝えした7つのポイントは、自社の商品やサービスと社会的課題に与えるインパクトの関係を考える際の代表的な切り口です。プレスリリースを書く際には、ぜひ自社の商品やサービスに対して、ここで挙げた7つのポイントから検討してみることをお勧めします。
最後に、これらのポイントは、できるだけ複数に該当できるように組織作りをしていくと効果的です。例えば、人間味のあるストーリーがあるからこそ専門性が認められ、専門性が認められているからこそ重要な話題に対する発言が求められるなど、重層的で深みが生まれ、同じようなプレスリリースを書いても説得力が大きく高まります。
特に、今目の前にあるプレスリリースを1通どうするかだけでなく、これから計画的に自社の広報PRを強化して行こうと考えられている場合には、自社の専門性をどこに定めどのように高めるか、具体的にどのような活動を行い、人や予算はどうするかといった、経営と密接に関わる意思決定が必要となり、このスタート地点で方向性を間違うと大きく遠回りすることになります。
弊社は、代表が中小企業診断士であり、このような経営と密接に関わる構築段階からのご相談にも対応しております。ぜひ、お気軽にご連絡ください。